絞り染めの歴史

絞り染はテキスタイルデザインのルーツ

布に模様を染めるために、先人はさまざまな工夫を凝らしました。絞り染はそのもっとも原始的な技法。
糸で括ったり、縫い締めたり、板で挟んだりした布を染めると、染め残しが独特の表情を描き出します。

インドで芽生えた絞り染が7世紀頃には日本に伝わっていたとか。奈良時代には多くの技が生まれ、衣服の模様を染め出しました。

一枚の布に丹精込める ――京鹿の子絞りの豪華さ

その後も、染色技術の発達につれて創意が凝らされ、江戸時代には多くの技法が完成しました。

なかでももっとも精緻を極めたのが「京鹿の子絞」。
布をつまみ、絹糸を巻いて粒状に絞り、わずか2㎜の絞り目を 一粒一粒連ねてゆきます。
白い粒が子鹿の斑点を思わせることから、その名が付けられたとか。気の遠くなるような手しごとを重ね、絹のきものに贅を凝らしました。

抽象表現が無限を描く ――絞り染めの素朴な美しさ

江戸時代に全盛期を迎えた京鹿の子絞。
その名はいつの頃からか絞り染の代名詞のようになりましたが、絞り染は100近い技法を今に伝えています。

絞り染が重ねた歳月をさかのぼれば、その原点は素朴な防染の技。制約から生まれる抽象表現、染め際に生まれる「にじみ」や「ぼかし」、意のままには染まらぬ絞りの妙が、無限の世界を描き出します。

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